塾屋のブログ

名古屋市のとある個別指導塾、の雇われ教室長のブログ。教室の様子、指導内容、勉強法、業界についてなどの雑感を綴っていきます。

【2020年度小学校教科書改訂】小学英語!【大学入試までを展望】


 過去記事はこちら。

kobetushidou-obata-naeshiro.hatenablog.com

kobetushidou-obata-naeshiro.hatenablog.com

 

さて、小学英語です。

早速、いってみましょう。

 

  

“教科化”について

以前に“必修化”について触れましたが、“教科化”の場合、所定の授業時間数が決められ、テストが実施され、通知表が付く、ということですね。

(今までは通知表はついていません)

 

通知表がつくとなると、親御さんの目線も違ってくるのではないでしょうか?

 

教科書の誌面展開 

7社の教科書がありますが、全て現在使われている「We Can!」をベースに編集されたものになります。

実は、「We Can!」は、学校によっては家へ持ち帰ることを禁止していたところもあるようなので、保護者の方であっても、「全く目にしたことがない」という方もいるかもしれません。

 

一応説明すると、基本的に単語、短い会話フレーズを覚えて、シーンに合わせて使ってみる、ということを重視した内容となっていました。

 

ですので、2020年度からの教科書も、ここは変わりません。

 

下記が誌面展開の一例です。 

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小学英語:誌面展開の一例

新学習指導要領においては、【「場面設定」や「英語を使う必然性」を重視しつつ、4技能をバランス良く身に付ける】となっているとのことです。

 

それ、ホンマでっか?

 つっこみどころは、まぁお分かりですよね。

4技能じゃないっす。どう見ても、「話す」「聞く」に振ってますよね。これ。

まぁ、「We Can!」の時点で、これは明らかでしたが。

 

誌面構成で面白い点が。

中学生の教科書では当たり前の、「基本文」や「新出語」が示されません。

親世代とは全く異なった学習のベクトルです。

 

「なんていいつつも、小学生英語でもそれなりに単語を覚えたり、最低限の文法はやるんでしょ?」

と、思われる方もいるかもしれませんが、恐らくやらないと思います。

現状、小学生に聞く限りでも、単にフレーズ丸覚えですから。 

英語に関しては、中庸的なことはせずに、文科省も本気で「話す」「聞く」に特化しようという意気込みが感じられます。

 

旧2技能と新2技能

旧は「読む」「書く」で、新は「話す」「聞く」ですね。

(これは私が便宜上言っているだけです)

 

親御さんも頭の悩ませ所だと思います。

中学では、まだまだ旧2技能での評価になるからです。

当然、定期テストにリスニングはありますし、会話表現の運用テストもやりますが、通知表評価を占める割合を考えれば、やはり旧2技能が圧倒的です。

 

実は、というか当然、というか、新2技能の評価割合を上げる目論見になっていますが、現場がそれにどれだけ対応できるかは、超疑問ですね。

 

これは、センターというか、共通テストにおける記述問題設定の頓挫と同じく、「テストをどうやんの?」という問題を孕んでいるため、おいそれと評価軸を変更することができないからだと思います。現場の先生も困っちゃいますもんね。

 

英語の外部試験化

御存知の通り、大学入試における、英語の外部試験化の動きが進んでいます。

国公立は足並みを揃える論調でしたが、結局各大学毎に利用を定める形に現状は落ち着きました。

試験の種類も英検だけでなく、TEAPやIELTSなどがあります。

 

愛知県の大学では、南山大学が外部試験の利用を早い時期から積極的に進めています。

出願資格として、英語外部試験の最低スコアを定める大学もあり、もはや外部試験のスコアを上げていくことは、受験に必須となるでしょう。

 

新2技能の養成は、間違いなく大事になってきます。

 

さて、ここで疑問です。

「旧2技能は、大事じゃないの?」

 

旧2技能も、当然大事

「話す」「聞く」にものすごい脚光が当たってますが、とりあえずの出口である大学入試においては、当然4技能評価です。

 

例えば、英検では、2017年度から4級5級にスピーキングテストが導入された一方で、3級と準2、2級にライティングテストが導入され、準1、1級のライティング問題も難化しています。

 

今まで、「話す」「聞く」は腰を据えてやってこなかったから、ガッツリやるぞ!!

という文科省も意気込みも分かりますが、「読む」「書く」も少なくともこれまでと同水準の力が求められると思います。

 

教科書の内容はあれですが、保護者の皆様におかれましては、+αで「話す」「聞く」の力が、今までよりもかなりハイレベルなものを求められるようになる、とお考え頂くのが良いと思います。

 

小学校で600~700、中学生で1600~1800語の語彙を要求

では、旧2技能はどうなるか、という点です。

 

見出しの通りですが、求める語彙力は右肩上がりとなっちょります。

小学校では、「読む」「書く」は求められませんが、中学では普通に試されるでしょうね。

 

ちなみに、高校での1800~2500語を合わせると、丁度MAX5000語となります。これは、英検2級の単語95%をカバーできる語彙数です。

2級は「高校卒業レベル」なので、ちゃんと設計されていますね。

(ちなみに準1級は9000語で95%、1級はなんと14000語!!)

 

この語彙数のスペリングが求められる訳ではないですが、「読む」という点においては、理解できなくてはいけません。

 

・・・小学生からガッツリ取り組んでいかないとあかんちゃうのかな、と思ってしまいますね。

ちょっと計算してみましょう。

 

小学5年~高校3年まで8年間。5000÷(365×8)=1.712・・・

 

ということで、1日2語覚えていけば、足りる計算ですね。

まぁ計算上は、って感じですけど。

生徒を見ていると、中々大変なんじゃないかなと思います。

 

また、中学生に求められる文法の知識も増えますし、ハイレベルになります。

 

・現在完了進行形

・原型不定

・仮定法

・直接目的語に節を取る第4文型

 

けっこー、これ、大変です。

 

現在完了進行形の話になると、動作V/状態Vの話になってきます。

従来型の『ている/ていた だから進行形!』ってなノリでは通じません。

進行形の教え方も本質的にする必要があります。

てなると、分詞を先に教えさせてくれ!と思ってしまいます。

 

原型不定詞も高校文法のメインディシュですよ。

この単元やるなら、5文型をしっかり仕込んでおかないとつらい・・・。

まぁ、使役Vと知覚Vまでなんでしょうけど。

どうせ受け身と混ぜて、『はい、beVだから原型はだめで~す、ざまぁ!!』というテンプレ問題が中学で流行るんでしょうね苦笑

(全国の塾講師が思っていることでしょう笑)

 

おまけに仮定法です。

これ、高校生でもけっこー苦戦する単元ですよ。

今日も高1に教えてたんですけど、「え?これを中学でやんの?けっこー難しくない?」って言ってました。

できる子なら一コマでちゃちゃっと説明しきっちゃうものでもあるんですが、中学生で、しかも英語苦手な子だと・・・。中々厳しいですな。

教える側の講師の質も、かなーり、問われそうです。

 

ということで、旧2技能もかなり難化の傾向なんです。

 

国の求める英語力を、どう、養うか、という問題

 我々塾の立場からすると、旧2技能を教える力は養ってきました。

英会話教室からすると、新2技能はネイティブの先生でバッチリです。

 

・・・one stop サービスがありません。おそらく、新たに「4技能バッチリですよ!」という新サービス形態ができあがると思うのですが、しばらくかかると思います。

 

学校はどうか、って話ですけど、まぁ、現状を見る限りは厳しそうですよね。

中学でも授業は基本All Englishにするとのことですが、英語で仮定法を教えらえる先生がいるとは思いませんし、もっと大きな問題は生徒側が理解できるとは思えないことです。

 

国のやりたいことは分かるのですが、教えられる人材が、圧倒的に足りないというのが実際だと思います。子どもたちに申し訳がないです。

 

公教育の穴を埋めるのも、我々民間の教育サービスに携わる企業のミッションであるため、微力ながらなんとか形をつくっていかなくてはと思います。

 

しかし、あまりに課題が山積みです・・・。